『こごみ』

  • 2014/05/17(土) 14:08:49


陽も傾き始めた薄暗い林道
私は道路脇に車を停め、冬の匂いも僅かに残る林の中へと踏み入った
「まさか、こんなところに・・・」

こごみが私の前から姿を消したのは、もう一昔も前の事だ
大和撫子とまでは言わないが、優しく繊細で、とても綺麗な女だった


何故、私の前から姿を消したのか
その理由を知りたい
もう一度会いたい


そして、昨日・・・
探偵の中村さんから連絡が来たのだ

「落ち着いて話を聞いてくれ」
「見つかったよ、T町の林の中だ」
「今から来れるか?」

私は食べかけのパピコを冷凍庫に戻し、現場へ向かった







中村さん!!
こごみが・・・こごみが見つかったんですか!!


「あぁ、新鮮だ・・・いや、かなり弱っている」
「一刻も早く、君の家に連れて帰りなさい」
「そして、熱いお風呂にでも入れてあげるといい」


・・・そうですね
私は一言も喋らないこごみを抱え、自宅へと向かった







家に着いても、こごみは何も語らなかった
ただ、ひたすら頭を下げ続けた

もういいよ、こごみ
お腹空いただろう?

想いの堰が切れるのを必死に食い止め
私は平静を装った
聞きたいことは山ほどあるんだ







これは、さっと茹でただけなんだけど・・・
「・・・」

かつお節とめんつゆとマヨネーズでどうぞ・・・
「・・・」



あっ!やっぱり温かいものが食べたいよね?
「・・・うん」

ハイ、よろこんでぇ~!!







なぁ・・・こごみ
そろそろ教えてくれないか

僕の前から居なくなった理由
何があったんだ?
僕が嫌いになったのか?







「違うわ・・・」
「私の本当の名前、あなたに知られたくなかったの・・・」

名前?
こごみはこごみじゃないか!

「あれは10代の若い頃にしか与えられない名前」

えっ!
そ、そうなの・・・?
でも、名前なんかどうでも良いじゃないか・・・

「綺麗ゴト言わないでっ!!」
「私の本当の名前を教えるわ!!」


「クサソテツよっ!!」


ク、 クサソテツ・・・
成人になると誰も見向きもしないという
あのシダ植物だったなんて・・・

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